内科はどのようなときに受診する?
体調を崩した時、病院に行った方がいいのか悩むことがありますよね。近年では新型コロナウイルスの流行もあり、自分の体調だけでなく周りの人に感染させないかも気にしなくてはならなくなりました。また健康診断などで異常がみつかったときは、内科を受診し、かかりつけ医として定期的な受診が必要になることがあります。
そこで、ここではどのような時に内科を受診すれば良いかについてご提案させていただこうと思います。
内科で診療を受けた方がいい症状
1.鼻水、喉の痛み、咳が出る時
鼻水や喉の痛み、咳が出る時は、いわゆる風邪を疑うことになります。風邪の原因はさまざまなものがありますが、基本的にはウイルスが鼻や喉に感染し、自分の免疫がこのウイルスをうまく抑えきれなかった場合に発症することになります。
通常の風邪を根治するための薬は存在せず、咳や喉の痛みを和らげるお薬を使いながら、自分の免疫が風邪のウイルスを排除するのを待つことになります。風邪の引き始めですと、葛根湯などの漢方を使い、しっかり体を休めることで治りが早くなることもあります。それぞれ市販の薬でも対応可能なため、必ず内科を受診する必要はありませんが、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスをはじめとして、近年は命に関わるような危険なウイルスの流行もあります。これらのウイルスには抗ウイルス薬も開発されており、重症化を防いだり、症状を早く治す効果があると言われています。ご自身には問題ない場合でも、職場やご家族への影響を考え、病院でしっかりと検査をしておくことも重要かと思います。また風邪かと思っていたら、マイコプラズマという特殊な感染症だったということもあり、やはり内科で一度診察を受けることをお勧めいたします。
新型コロナウイルス感染症
症状はいわゆる風邪と大きく変わりませんが、高熱が出たり、強い喉の痛みが出ることがあります。特定の持病がある方や高齢の方は重症化しやすく、命を落とすこともあります。
<治療>
発症早期であれば、抗ウイルス薬の効果が期待できます。ウイルスが増え切る前に叩くというわけです。2024年現在はゾコーバ、ラゲブリオ、パキロビットなどが使用できます。若い方や持病がない方は、ゾコーバを主に使用することになります。この薬は発症3日目までに内服すれば、症状が1日ほど早く改善すると言われています。ラゲブリオやパキロビットは重症化予防の効果があり、ご高齢の方や特定の持病がある方に処方されます。しかし5類感染症への移行により、これらの薬への補助がなくなり、3割負担では1万5千円〜3万円ほどかかる薬となっていますので、ご自身の症状や薬の効果を見比べながら薬を内服するか決めると良いでしょう
インフルエンザウイルス感染症
こちらもほぼ風邪と同じような症状が出ますが、高熱が出たり、節々の痛みが出たりすることがあります。
<治療>
新型コロナ同様、発症早期であれば抗ウイルス薬の効果が期待できます。タミフルやリレンザ、イナビル、ゾフルーザなどが使用されます。年齢やご希望の薬の形状(飲み薬や吸入薬があります)に合わせて薬を処方いたします。
マイコプラズマ感染症
あまり聞き慣れない病気かもしれませんが、よく小児や若い人の間で流行する感染症で、熱や咳、体のだるさが出てきます。咳は長引くこともあります。成人はかかりにくいと言われていましたが、近年では時折流行が確認されています。ご家族がみんな咳をしていたので、新型コロナやインフルエンザだと思っていたら、マイコプラズマだった、なんてこともしばしば見受けられます。
<治療>
マイコプラズマは特殊な細菌の一種であり、抗菌薬が効果があります。成人の場合は自然に軽快することが多いため、状況に応じて抗菌薬を使用するかを決定します。
特に喉の痛みが強いとき
風邪の中でも喉の痛みが強い時、咽頭炎や扁桃炎、手足口病の可能性があります。ほとんどの原因がウイルスですが、咽頭炎の場合、時折溶連菌という細菌が原因であることがあります。
咽頭炎や扁桃炎は重症化すると喉の周囲に膿がたまり、気道が閉塞することもあるため、唾を飲み込めないほど喉が痛い、横になると息がしづらいなどの症状がある場合は必ず病院を受診するようにしましょう。
<治療>
通常は症状を抑える痛み止めやトローチを処方します。溶連菌関連の咽頭炎の場合は抗菌薬を処方することもあります。
特に鼻症状が強いとき
鼻水だけがよく出る、鼻詰まりが目立つときは、アレルギー性鼻炎の可能性があります。アレルギーは本来人体にとって無害なものに対して、体の防御反応(免疫)が過剰に反応してしまう状況です。毎年同じ時期に鼻水がでたり、職場や自宅など決まった場所で鼻の症状が出る場合、何らかの物質に対してアレルギーがある可能性があります。アレルギーの原因には花粉やハウスダストなどが考えられます
<治療>
抗ヒスタミン薬の内服や、点鼻薬を使用します。抗ヒスタミン薬は種類によっては眠気がでることもありますので、車の運転など集中力が必要な作業があるかたはご相談ください。
スギ花粉へのアレルギーがある方では、根治を目指す治療として舌下免疫療法というものがあります。12歳以上の方が対象で、体に少しずつスギのエキスを入れていき、体の過敏反応を和らげていきます。時間をかけてスギのエキスの量を増やしていき、スギ花粉に反応しにくい体を作ることで、アレルギー症状が緩和されます。
普通の風邪で自宅療養していても病院に行った方がいいとき
体のだるさがひどい、食事が全く取れない、息苦しい、意識が朦朧とするなど、明らかにいつもと様子が異なる場合は、風邪が重症化している可能性があります。必ず病院を受診しましょう。
また咳が長引く場合は、隠れていた喘息が見つかることもあります。結核や肺がんなど、命に関わる病気が見つかることもあります。一般に風邪の咳は2週間程度で落ち着いてくるため、それ以上咳が長引く時は内科を受診してみてください。
風邪と「抗生剤」
時折「抗生剤」や「抗生物質」をご希望される方もおられますが、基本的に風邪にはこれらの薬は効きません。感染症を起こす原因微生物は大きくウイルス、細菌、寄生虫の3つに分類され、ウイルスは細菌よりはるかに小さく、そして抗菌薬が効きません。抗菌薬?抗生物質?と思われるかも知れませんが、医療者は基本的に抗生剤のことを、それぞれの原因微生物に対応して抗ウイルス薬、抗菌薬、抗寄生虫薬と分けて呼んでおり、一般的に「抗生物質」として処方されているのは抗菌薬です。
風邪に効く抗ウイルス薬はないの?と気になるところですが、風邪の原因となるウイルスにはたくさんの種類があるため攻撃方法が定めにくいことや、ウイルスが小さくて非常にシンプルな形をしていて攻め所が難しいこと、そもそも安静にしていれば治る病気であることから、製薬会社もなかなか開発しようとすることはありません。
2.腹痛がある時
一般に腹痛と下痢がある場合はウイルス性腸炎のことが多く、整腸剤などを使用しながら体からウイルスが排除されるのを待つことになります。ですので、必ずしも内科を受診する必要はありませんが、嘔吐を繰り返す場合などは、脱水を防ぐために病院で点滴をすることもできます。
逆に下痢を伴わない腹痛や、下痢をしたときと腹痛の性状が違う時は、検査や処置が必要になることが多いため、内科の受診を強くお勧めします。腹部には様々な臓器があるため、痛みの部位や正常によってさまざまな原因を考えていく必要があります。
腹痛と下痢がある時
上記の通り、一般的には急性腸炎を疑います。腹痛に波があり、水っぽい便が何度もでてきます。作り置きの食事、お刺身や生焼けのお肉を食べたあとに症状が出た場合、食中毒の場合もあります。嘔吐を繰り返す、高熱がでる、便に血が混じっている等の症状が合併しているときは内科を受診するようにしましょう。
また腹痛と下痢が1ヶ月以上続く時は、クローン病や潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群など特殊な病気も考える必要があり、大腸カメラをお勧めしています。
<治療>
いわゆる腸炎にはウイルス性が多く、基本的には整腸剤などを使用しながらウイルスを出し切るのが治療になります。下痢止めはウイルスを体に溜め込むことになるため、推奨されていません。
食中毒の場合は細菌感染症であることがあり、状況によっては抗菌薬を使用します。
腹痛や下痢が1ヶ月以上続くときは、特殊な腸炎を考え大腸カメラの検査を行います。病気の診断に合わせて免疫を調整する薬や、腸の動きを調整する薬などを使用します。
上腹部に痛みがあるとき
お腹の上半分には胃や食道、十二指腸、膵臓、胆嚢などの臓器があります。急性胃炎や胃潰瘍、逆流性食道炎、膵炎、胆石症などの可能性があり、内科を受診することで診断することができます。時折心臓からの症状でみぞおちのあたりに痛みがでることもあります。
<治療>
胃や食道、十二指腸に異常があると考えられる時は、胃カメラの検査を行います。逆流性食道炎や胃潰瘍などがある場合はプロトンポンプ阻害薬やH2受容体阻害薬などのお薬を処方します。
胆嚢や膵臓などに異常があると考えられる時は、超音波検査や採血を行います。胆嚢炎や膵炎がある場合は、入院で治療する必要があることが多いため、急性期病院にご紹介させていただきます。
下腹部に痛みがある時
お腹の下の方に痛みがある時は、虫垂炎(盲腸)や憩室炎、尿管結石などの可能性があります。女性であれば卵巣捻転など婦人科系の病気が隠れていることもあります。
<治療>
診断には超音波検査などを行いますが、CTなどの画像検査をしたほうが診断につながることもあります。状況によって急性期病院にご紹介させていただきます。
軽い虫垂炎や憩室炎は食事を控え、抗菌薬を飲んでいただき治療をします。炎症が強い場合、虫垂炎は手術が必要なこともありますし、憩室炎は入院での治療をお勧めすることもあります。
尿管結石は鎮痛薬を飲みながら石が出てくることを待ちますが、結石が大きい場合は自力では石が出てこないため、泌尿器科で処置を受けていただく必要があります。
婦人科系の痛みであれば、緊急手術が必要になることもあるため、状況に応じて急性期病院をご紹介させていただきます。
3.慢性的な症状がある時
便秘、同居人にいびきを指摘された、歩くと息切れするなど、長い期間にわたって何らかの症状がある場合も、内科を受診してみてください。
便秘症
便秘とは一般的に週に3回未満の排便、便が硬く力んでも排便できない状態を指します。食物繊維の不足や運動不足など生活習慣の影響、飲んでいる薬の副作用、大腸の病気などが原因となります。
<治療>
軽度の便秘の場合、食事や生活習慣の改善で治ることが多いですが、場合によっては薬を使用する必要が出てきます。便秘の薬には大きく腸を刺激して便を出すタイプの薬と、便を柔らかくして出しやすくするタイプの薬があります。市販薬でも腸を刺激するタイプの薬が売られていますが、長期使用により効果が弱くなることや腸の機能が落ちる副作用が生じるため注意が必要です。内科では皆様の体の状況にあったお薬を調整させていただきます。
いびき
いびきがうるさいと言われたり、寝ている途中に呼吸が止まっていると言われたりした場合、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。肥満や顎の骨格、飲酒などが原因で起こります。日中に眠気が強くなり、交通事故の原因の一つとして問題視されています。
<治療>
CPAPと呼ばれる、鼻につけたマスクから空気を送ることで呼吸を補助する装置を使うことで無呼吸を改善させることができます。肥満や飲酒が原因の場合は、生活習慣の改善も重要です。
息切れ
息切れの原因にはタバコなどによる慢性閉塞性肺疾患(タバコ肺)、気管支喘息、心不全などの心臓の病気などが考えられます。
<治療>
まずは原因を調べることが重要になります。肺の病気であれば、吸入薬などを使用し治療を開始します。心臓の病気であれば、超音波検査などを行い、心臓の機能が弱っている原因を調べ、薬による治療が始まります。状況によってはより専門的な診察が必要になるため、大きな病院などにご紹介させていただきます。
4.健康診断などで異常と言われた時
高血圧症などの生活習慣病
血圧が高い、コレステロールなどの脂質が高い、糖尿病の疑いがあるなど、生活習慣病が疑われる場合は、内科を受診するようにしましょう。これらの病気は血管をじわじわと硬くし、ある日突然心筋梗塞や脳梗塞を起こす原因となります。それ以外にも体のありとあらゆる部位に血管はあるため、例えば腎臓や目、足先の神経などが悪くなる原因となります。
<治療>
まずは食事や飲酒、喫煙などの生活習慣の見直しを行います。間隔を開けて採血などを行い、改善に乏しい場合は内服薬による治療が始まります。
便潜血陽性と言われた時
便の中に血が混じっているということは、大腸に何らかの病気が隠れている可能性があります。痔や大腸ポリープ、大腸がんなどの可能性があるため、大腸カメラを強くお勧めします。
何科に行けばわからない時は、まずはご受診ください
色々な症状、疾患について説明して参りましたが、これらの症状以外でも内科で対応しているものもあります。内科でも専門的な内容となると、それぞれの医師の得意分野で対応したほうがよいこともあるため、当院で対応が難しい場合は、皆様の病状に合わせて、適切な医療機関をご案内させていただきます。また症状によっては耳鼻科や泌尿器科、整形外科などをお勧めすることもあります。皆様ではなかなか判断が難しいことも多くありますので、まずはお気軽に当院をご受診いただければと思います。
かかりつけ医
厚生労働省によって、かかりつけ医を持つことが推奨されています。かかりつけ医とは普段から健康についてなんでも相談できるような医師で、皆様の日頃の健康状態を把握してもらえる利点があります。関係性ができてくると、医師はちょっとした変化にも気づきやすくなり、皆様も医師に相談がしやすくなります。健康について何かお困りのことがございましたら、お気軽に当院を受診いただけますと幸いです。